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東京高等裁判所 平成6年(行ケ)20号 判決

東京都世田谷区祖師谷1丁目32番7号

原告

荒井昌

同訴訟代理人弁理士

平山洲光

東京都千代田区霞が関3丁目4番3号

被告

特許庁長官

高島章

同指定代理人

奥村忠生

山川サツキ

井上元廣

関口博

吉野日出夫

主文

特許庁が平成2年審判第1615号事件について平成5年12月7日にした審決を取り消す。

訴訟費用は被告の負担とする。

事実

第1  当事者の求めた裁判

1  原告

主文と同旨の判決

2  被告

「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決

第2  請求の原因

1  特許庁における手続の経緯

原告は、「虹投影装置」と題する発明(以下「本願発明」という。)について、昭和61年3月12日、特許出願をした(昭和61年特許願第54511号)ところ、平成元年12月13日、拒絶査定を受けたので、同2年2月15日、審判を請求した。特許庁は、この請求を平成2年審判第1615号事件として審理した結果、平成5年12月7日、上記請求は成り立たない、とする審決をし、その審決書謄本を平成6年1月19日、原告に送達した。

2  本願発明の特許請求の範囲の記載

「集光系の大きさに比較して点光源に近い極く短い線状の白色光源と、該光源の発散光が中心に向かう場合と左右両端に向かう場合で距離が殆ど同じで、屈折後に広い幅をもった扇状に拡がる平行光となるように、該光源を中心として円弧状に彎曲して設けた円筒コンデンサレンズと、該コンデンサレンズで得られた扇状の平行光を第一屈折面に入射するように設けた洗濯板状のプリズムとからなる虹投影装置」(別紙図面1参照)

3  審決の理由の要点

(1)  本願発明の要旨は、前項記載のとおりである。

なお、特許請求の範囲における「円弧状に彎曲して設けた円筒コンデンサレンズ」とは、同レンズの円筒軸(ここで「円筒軸」とは、レンズの長手方向に形成する軸をいう。)が直線状のレンズを包含するものである。

(2)  昭和48年実用新案登録願第2082号のマイクロフィルム(以下、「引用例」といい、引用例記載の考案を「引用発明」という。別紙図面2参照)には、光源ランプ、カマボコ型集光レンズ、三角あるいは多角形のプリズムを順に配置してなるスペクトル投光器が記載されており、また、光源からの分散光束は、カマボコ型集光レンズによって、上下方向には平行光線、左右方向には発散光線となってプリズムの一面に投射されることが記載されている。また、図面を参照すれば、上記集光レンズが光源ランプを中心として設けられていることが自明の程度に記載されている。

(3)  両発明を対比すると、引用発明の「光源ランプ」は、図面を参照すれば、線光源と比べて、点光源に近い短い線状の光源であることは明らかであるから、本願発明の「点光源に近い極く短い光源」に相当し、また、引用発明の「カマボコ型集光レンズ」、「スペクトル投光器」は、本願発明の「円弧状に彎曲した円筒コンデンサレンズ」、「虹投影装置」にそれぞれ相当するものであるから、両者は、点光源に近い極く短い光源と、該光源の発散光が屈折後に広い幅をもった扇状に拡がる平行光となるように、該光源を中心として円弧状に彎曲して設けた円筒コンデンサレンズと、該円筒コンデンサレンズで得られた扇状の平行光を第一屈折面に入射するように設けたプリズムとからなる虹投影装置である点で一致する。

これに対し、本願発明では、光源が集光系の大きさに比較して点光源に近い極く短い線状の白色光源であるのに対し、引用発明では、光源ランプを用いている点(相違点1)、光源から円筒コンデンサレンズに至る発散光の距離が、本願発明では、光源の発散光が中心に向かう場合と左右両端に向かう場合で距離が殆ど同じであるのに対し、引用発明では、発散光の距離については記載されていない点(相違点2)、プリズムが、本願発明では、洗濯板状のプリズムであるのに対し、引用発明では、三角あるいは多角形のプリズムである点(相違点3)でそれぞれ相違する。

(4)  相違点1については、虹投影装置において、光源として白色光源を用いることは従来周知であるから、従来周知の白色光源を引用発明における光源ランプ、即ち、点光源に近い短い線状の光源に適用して、白色光源を集光系の大きさに比較して点光源に近い極く短い線状のものとすることは、当業者が容易になし得たものと認められる。相違点2については、引用発明においても、集光レンズは、円弧状に彎曲して設けた円筒状のレンズであって、該レンズの中心に光源ランプが設けられているから、該光源から投射された発散光が、集光レンズの中心に向かう距離と該レンズの左右両端に向かう距離が殆ど同じである。したがって、相違点2について、格別の発明力を認めることはできない。相違点3については、分光プリズムを洗濯板状のプリズムで形成することは従来周知(昭和55年実用新案公開第65601号公報参照)であるから、該洗濯板状のプリズムを引用発明におけるプリズムに適用して、プリズムを洗濯板状のプリズムとすることは、当業者が容易になし得たものと認められる。

そして、本願発明の要旨とする構成によってもたらされる効果も引用発明及び周知事項から予測できる程度のものであり、格別なものとはいえない。

(5)  したがって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものと認められるので、特許法29条2項により特許を受けることができない。

4  審決の取消事由

審決の認定判断のうち、審決の理由の要点(1)のなお書き部分(ただし、「円筒軸」の概念については認める。)は争い、その余は認める。同(2)は認める。同(3)のうち、引用発明の「カマボコ型集光レンズ」が本願発明の「円弧状に彎曲した円筒コンデンサレンズ」に相当し、この点において両者は一致するとした点は争うが、その余は認める。同(4)のうち、相違点2の判断は争うが、その余は認める。同(5)は争う。審決は、本願発明の特許請求の範囲の「円弧状に彎曲した円筒コンデンサレンズ」の技術的意義の理解を誤った結果、一致点を誤認し、かつ、相違点2の判断を誤り、ひいては本願発明の顕著な作用効果を看過し、本願発明の進歩性を否定したものであるから、違法であり、取消しを免れない。

(1)  一致点の誤認(取消事由1)

審決は、本願発明の特許請求の範囲における「円弧状に彎曲した円筒コンデンサレンズ」とは、円筒軸方向に直交する断面が円弧状に彎曲して設けられているレンズであれば足りるから、円筒コンデンサレンズの円筒軸が直線状のいわゆるカマボコ型レンズである場合を包含すると認定したが、誤りである。すなわち、本願発明の上記円筒コンデンサレンズとは、円筒コンデンサレンズの円筒軸が円弧状のレンズを意味するものであり、このことは特許請求の範囲において当該円筒コンデンサレンズの機能として「該光源の発散光が中心に向かう場合と左右両端に向かう場合で距離が殆ど同じで、屈折後に広い幅をもった扇状に拡がる平行光となる」旨限定されているところから明らかというべきである。

これに対し、引用発明の「カマボコ型集光レンズ」は、円筒軸が直線状の平板形のレンズであるから、同レンズについて、審決が「光源の発散光が中心に向かう場合と左右両端に向かう場合で距離が殆ど同じ」であるとした認定は誤りであり、したがって、両発明のレンズが一致しないことは明らかであるから、審決の一致点の認定はこの点において誤っている。

(2)  相違点2の判断の誤り(取消事由2)

審決の相違点2についての判断は、本願発明の前記「円筒コンデンサレンズ」と引用発明の「カマボコ型集光レンズ」が一致することを前提とするものであるが、その前提に誤りがあることは前項に述べたとおりである。そして、本願発明はその特許請求の範囲記載の構成を採択したことによって、点光源から円弧状の円筒コンデンサレンズに至る距離は、コンデンサレンズの中央に向かう場合と左右両端に向かう場合とで殆ど同じであり、屈折後に収斂光又は発散光となる比率は極めて小さく、したがって、コンデンサレンズから扇状に広がって出る光は、全体にわたって略完全な平行光であるから、分光後は極めて鮮やかな色光が得られ、全体にわたり形の整った美しい虹像が得られるという格別の作用効果を奏する。これに対し、引用発明では、光源ランプの光束が入射するカマボコ型集光レンズへの入射面が平板面であるから、鮮明な虹像が得られず、本願発明の奏する顕著な作用効果を奏することはできないのである。したがって、相違点2について格別の発明力を認めることができないとし、かつ、本願発明の奏する顕著な作用効果を否定した審決の判断は誤っている。

第3  請求の原因に対する認否及び被告の主張

請求の原因1ないし3は認めるが、同4は争う。審決の認定判断は正当である。

1  取消事由1について

本願発明の「円弧状に彎曲して設けた円筒コンデンサレンズ」の構造は、その文言からしてレンズの円筒軸方向に直交する断面が円弧状に彎曲して設けられているものを意味するものとの解釈もできる。これに対して、引用発明の「カマボコ型集光レンズ」の構造は、軸方向に直交する断面がほぼ円弧状の彎曲を呈していることは技術常識であるから、これが円弧状に彎曲して設けられた集光レンズであることは明らかであり、したがって、両者が一致するとした審決の認定に誤りはない。

2  取消事由2について

前述したように、本願発明における「円弧状に彎曲して設けた円筒コンデンサレンズ」の構造がその円筒軸方向に直交する断面が円弧状に彎曲している円筒コンデンサレンズである以上、本願発明と相違することのない引用発明における光源からカマボコ型集光レンズに至る距離は、該レンズの中央に向かう場合と該レンズの両端に向かう場合とで殆ど差異はなく、本願発明の円弧状に彎曲して設けた円筒コンデンサレンズと引用発明のカマボコ型集光レンズとの作用効果に差異が生ずるものとは認められない。

したがって、相違点2について、格別の発明力を認めることができないとし、また、本願発明の作用効果は引用発明及び周知事項から予測できる程度のものであるとした審決の判断に誤りはない。

第4  証拠

証拠関係は書証目録記載のとおりである。

理由

1  請求の原因1ないし3は当事者間に争いがない。

2  本願発明の概要

成立に争いのない甲第2号証(本願明細書)によれば、本願発明の概要は以下のとおりである。

本願発明は、店舗、舞台装置、玩具等において光学的装飾効果を奏し得る虹投影装置に関するものである(明細書1頁下から6行ないし3行)。この種の従来装置においては、管状のハロゲンランプのような線状光源を用い、これが発する光をこれと平行する円筒コンデンサレンズで平行光とし、これをプリズムで分光して虹像を投影するものであるが、光源が横長で、かつ、コンデンサレンズが平板であるため、虹像の中央付近は鮮明に投影することができても、両端に行くに従いコンデンサレンズから出る光は平行光から次第に収斂光となり、プリズムによって分光された色光が混合する結果、鮮明な虹像が得られないという問題点があった(明細書2頁7行ないし19行)。また、この場合、光源を短くし点光源に近くして、中央付近の虹像のみを使用しようとしても、光束が減少して、光量不足となり、やはり鮮明な虹像を得ることができないという問題点があった(明細書3頁末行ないし4頁4行)。

そこで、本願発明は上記の各問題点の解決を課題として、特許請求の範囲記載の構成を採択した結果、光源から円弧状に彎曲して設けられたコンデンサレンズに至る距離は、コンデンサレンズの中央に向かう場合と、その左右両端に向かう場合とで殆ど同じであり、屈折後に収斂光又は発散光となる比率は極めて小さく、したがって、コンデンサレンズから扇状に広がって出る光は、全体にわたって略完全な平行光であるから、プリズムによる分光後は、中央から両端部に至るまで、極めて鮮やかな色光が得られ、全体にわたり形の整った虹像が得られる、装置全体を平板的に構成できる、点光源の位置の調整により近距離でも鮮明な虹像を得ることが可能となるなどの作用効果を奏するものである(明細書4頁17行ないし6頁18行)。

3  取消事由について

(1)  取消事由1

前記当事者間に争いのない本願発明の特許請求の範囲の記載によれば、本願発明は、「白色光源」、「円筒コンデンサレンズ」及び「プリズム」の3つの部材から構成されるものであることは、上記記載自体から明らかである。そして、上記「円筒コンデンサレンズ」については、「該光源の発散光が中心に向かう場合と左右両端に向かう場合で距離が殆ど同じで、屈折後に広い幅をもった扇状に拡がる平行光となるように、該光源を中心として円弧状に彎曲して(いる)」旨の限定が付されているので、以下、上記の限定の技術的意義について検討すると、まず、前段の「該光源の発散光が中心に向かう場合と左右両端に向かう場合で距離が殆ど同じ」との限定は、「白色光源」と「円筒コンデンサレンズ」の位置関係を示すものであり、また、後段の「円弧状に彎曲して(いる)」との限定が「円筒コンデンサレンズ」の形状を示すものであることは上記の文脈自体から明らかであるところ、これらの限定文言によれば、「円弧状に彎曲した円筒コンデンサレンズ」と「白色光源」の関係は、「白色光源」から発散する光が円弧状に彎曲した「円筒コンデンサレンズ」の中心に到達する距離とその左右両端部に到達する距離とが「殆ど同じ」距離になるとの位置関係にあることを意味するものであることは、上記の限定文言の文理上から一義的に明らかというべきである。

これに対し、「円筒コンデンサレンズ」の前記限定文言のうち中段の「屈折後に広い幅をもった扇状に拡がる平行光となるように」との限定文言は、上記の前段及び後段の各限定によって「白色光源」から発散した光が「円筒コンデンサレンズ」を通過した後に形成する光の進行状態を意味するものであることはその文脈自体から明らかであるが、上記中段の限定文言の文理によれば、「白色光源」から発散し「円筒コンデンサレンズ」を通過した光は、「円筒コンデンサレンズ」の屈折により「広い幅をもった扇状に拡がる平行光」を形成することを意味するものであると理解可能であるところ、「扇状」なる表現の一般的な語義が、中心点から放射状に拡がる状態を意味するものであることに照らすと、「一点を中心とする放射状」と「平行光」との関係は必ずしも一義的に明確とはいい難いものといわざるを得ない。そこで、前記の前段、中段及び後段の密接に関連した「円筒コンデンサレンズ」の限定文言の技術的意義について、発明の詳細な説明を参酌しながら、以下、検討することとする。

前記甲第2号証には、従来例に関して、「光源が横長で且つコンデンサレンズが平板であるため、虹像の中央付近は鮮明に投影することができても、両端に行くに従いコンデンサレンズから出る光は平行光から次第に収斂光となり、プリズムによって分光された色光が混合する結果、鮮明な虹像が得られない問題があった。即ち、コンデンサレンズが平板であると、第6a図に示す如く、光源Oからコンデンサレンズ13に直交して入射する紙面に鉛直なOA断面に沿った光線は、第6b図のように、平行光線となってプリズムに入射するが、光源Oからコンデンサレンズ13に傾斜して入射するOB、OB’断面に沿った光線は、第6c図のように、距離がD1だけ遠くなるぶんだけ曲げられ、更に傾斜してコンデンサレンズ13に入射するOC、OC’断面に沿った光線は、第6d図に示すように、距離がD2のように更に遠くなるぶんだけ強く曲げられて収斂するため、これをプリズムで分光した虹像は、第6e図に示す如く、中央Aから外側にB、B’、C、C’のように遠ざかる程、曲率が増大して色光が混合し、鮮明な虹像が得られないこととな(る)」(明細書2頁13行ないし3頁15行)との記載が認められ、この記載及び図面によれば、従来例のコンデンサレンズは円弧軸(レンズの長手方向に形成する軸をいうことは当事者間に争いがない。)が直線状をした平板状凸レンズであるため、コンデンサレンズに直交して入射する光線は、平行光線となってプリズムに入射するが、上記直交して入射する光線よりレンズの両端に行くにつれてレンズまでの距離が遠くなることから、その分だけ、入射する光が収斂して平行光線とはならず、鮮明な虹像が得られないという欠点があったことが認められる。

これに対し、本願発明においては、「第5a図に示す如く、光源Oから円弧状コンデンサレンズ3に至る距離は、コンデンサレンズの中央に向かう場合OAと、コンデンサレンズの左右両端に向かう場合OB、OB’、OC、OC’とで殆ど同じであり、屈折後に収斂光又は発散光となる比率は極めて小さく、従って、コンデンサレンズから扇状に広がって出る光は、第5b図に示す如く、全体にわたって略完全な平行光であるから、プリズムによる分光後は、第5c図に示すごとく、中央Aから両端部B、B’、C、C’に至るまで、極めて鮮やかな色光が得られ、全体にわたり形の整った美しい虹像が得られる」(5頁4行ないし16行)との記載及び図面が認められ、この記載によれば、光源Oからレンズまでの距離はレンズ両端部分においても中央部分とほぼ等しいため、入射した光が収斂する割合が少なく、ほぼ平行光となることが認められる。

してみると、従来例の集光レンズが平板状の凸レンズ、すなわち、円筒軸方向に直交する断面が円弧状に彎曲しており、かつ、円筒軸が直線である凸レンズであるのに対して、本願発明における「円弧状に彎曲して設けた円筒コンデンサレンズ」とは、円筒軸方向に直交する断面が円弧状に彎曲しており、かつ、円筒軸が円弧状に彎曲した凸レンズを意味するものと解すべきものである。

そうすると、本願発明の上記「円筒コンデンサレンズ」は、レンズの円筒軸方向に直交する断面が円弧状に彎曲して設けられているレンズも含まれるとした審決の認定は、円筒軸が円弧状に彎曲したとの限定を無視するものであるから相当ではなく、本願発明の要旨の認定を誤ったものといわざるを得ない。

そこで、進んで、引用発明についてみるに、成立に争いのない甲第3号証(引用例)によれば、引用発明は、光源、カマボコ型レンズ及び回転装置に連結された光透過屈折体を筺体内に配置した構成からなるスペクトル投光器であり、カマボコ型レンズは光源から発散される光を光透過屈折体(実施例ではプリズム)に所定の光線として導く役割を果たすものであることが認められるから、これが本願発明の「円筒コンデンサレンズ」に対応することは明らかである。そこで、前記甲第3号証によって引用発明のカマボコ型レンズの形状についてみると、これを直接定義した記載は見当たらないが、実施例として示されたカマボコ型レンズ(第1図、第2図、第3図及び第5図の各カマボコ型レンズ5)は、円筒軸方向に直交する断面が円弧状に彎曲しており、かつ、円筒軸が直線である凸レンズであることが明らかである。そして、引用例を精査しても、上記のカマボコ型レンズが円筒軸が円弧状の凸レンズを含むものであることを伺わせる記載ないしはこれを示唆する記載を見出すことはできない。

してみると、引用発明のカマボコ型レンズとは、本願明細書が従来例として指摘した円筒軸方向に直交する断面が円弧状に彎曲しており、かつ、円筒軸が直線状の凸レンズを意味するものであることは明らかであるから、両者が一致するとした審決の認定は誤りといわざるを得ない。

(2)  したがって、審決は、本願発明の「円筒コンデンサレンズ」の技術的理解を誤った結果、一致点を誤認し、ひいては相違点を看過したものであって、この誤りが審決の結論に影響するものであることは明らかであるから、その余の取消事由について判断するまでもなく審決は違法として取消しを免れないというべきである。

4  よって、本訴請求は理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 関野杜滋子 裁判官 田中信義)

別紙図面1

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別紙図面2

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